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5~6月のお題
Lump様より「醒めぬ夢は君のため」 『恋する乙女の戦略X』の続編。 ギャグ。 「馬鹿者!!」 今日も今日とて、華胥国炎狼山州州庁監査室には、監査室長・高賀の怒鳴り声が響き渡っていた。 「ひゃいぃ!」 大声に体を跳ねさせたのは、彼をここまで怒らせている原因・部下である監査員の撫子だった。 「お前という者はいつもいつもいつもいつも、人の体を触ってきおって! そんなことをしている暇があるなら仕事をしろ!!」 「だってだって、室長の素敵な筋肉様が……っ」 「筋肉に様をつけるな、気色悪い!」 そこまで怒鳴って、ようやく高賀は一息ついた。長く重い溜息を吐き、目の前でびくびくと正座している部下を見下ろす。 「まったく……。お前も無理して筋肉好きを名乗らなくともよいのだぞ。もう知っているのだからな」 「ぎゃふん! 何故それを!」 撫子は勢いよく飛び退り、隣の部屋との間を仕切っている襖に、背中をぴったりとつけた。顔は真っ赤になったり真っ青になったり間で紫になったりと忙しい。 「…………この前居酒屋で耳にした」 自分に好意があるとはっきり耳にした時の衝撃と恥ずかしさも同時に思い出して、高賀は顔をあさっての方向に逸らした。 「まままさか室長、あの話を……!」 「聞いた」 「ジーザス!!」 (何故外国語?) 内心首を傾げながらも、もう一度筋肉好きを名乗らなくともよい、と念を押す。これ一つで自分の今後の人生が快適になるかそうでないかが変わってくるのだ。重要だ。 「……じゃあ私、もう本当の自分を出していいってことなんですね!」 「(本当の自分?)まあ、そうだな」 「うふふふふ……それじゃあ……」 撫子は高賀に抱きつき、その懐に手を突っ込んだ。 「失礼します!」 「なあっ!? お前、確か筋肉好きは面白いからと……」 肌の上を這う手指に冷や汗をかきながら彼女の腕を掴み、全力を持って動きを止める。 「おい……これはどういうことだ……」 全力で押さえているというのに、撫子の力は強く、気を抜くと押し切られてしまいそうだった。 「あっ、私筋肉フェチじゃなくて皮膚フェチだったんです!」 「はぁあああああああああああア?!」 以前、真正の変態だったらどうしようかと思っていたが、本当に本当に真正の変態だったらしい。 「えいっ」 「っ」 大声を出した隙をついて再び指が高賀の肌をまさぐり始める。 「はう……やっぱり室長のお肌すべすべでちょうどいいしっとり感……。やっぱりこれは室長のお腹じゃないと味わえない貴重なお肌ですねえ」 「やめっ……さわ……っ!」 撫子の手指が無遠慮に、しかし優しく触れてくるものだから、高賀の体は正直にも体を固くしたり跳ねさせたりと反応を返してしまう。女に主導権をすっかり握られてしまっているのがまた何とも情けない。 「室長、感じちゃってるんですか? かわいい……!」 「嬉しくない! 触るな!」 「本当のことを言うと、全身で室長のお肌を感じたいんですけど、ここで押し倒しちゃってもいいですか?」 「いいわけあるか! というか女がそんな言葉を口にするな!!」 恋する乙女の暴走Y 「ああ、何だか夢みたい! これって本当に現実? それとも私の妄想の世界じゃないかしら!?」 「俺も夢だと思いたい……夢であったらどんなにいいことか……」 現実という名の醒めない悪夢は、まるで撫子のために世界が回っているかのような錯覚を覚える。 「これは夢だ……性質(たち)の悪い夢なんだ……」 腹の上に頭を乗せて頬を摺り寄せている部下を無視しながら、ぶつぶつと呟く。 撫子という名の性質の悪い酔いから醒めたら、これが夢であることを祈ろう。 彼女は皮膚フェチ!(ガチ) |
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