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【2024/05/18 16:37 】 |
かもなんて告白に使うんじゃありません
4~5月のお題2。
「確かに恋だった」様より、
「好きかも、しれない」。

現代で、甘い予定。
「俺……お前のこと、好きかも、しれない」
「――え」
 それってナニ、好きなの好きじゃないの、そもそもコレ告白なの告白じゃないのどっち!?
 幼馴染の彰(あきら)を前に、七瀬(ななせ)は心の中で突っ込み続けた。
「は、話はそれだけだ! じゃあな!」
「あっ、ちょっと待ってよ彰……」
 混乱したままの七瀬をその場に残し、頬を真っ赤に染めた彰は競歩の速さで歩き去った。
 ――何なの、コレ。
 花の十七歳、七瀬の新たな恋の苦難は、古い恋が終わった日に始まった。


 この世は本当に、何が起こるかわからない。
 自室のベッドの上で、七瀬はどんよりとそんなことを思っていた。
 七瀬は今日、憧れの先輩とデートに行ってフラれ、傷心――という名の愚痴――を幼馴染の彰に聞いてもらっていた。
 愚痴るだけ愚痴って、気分がどうにか晴れはじめたところで、今度は彰に告白された。何ともディープな一日だ。
 人って一日に告白して告白されるものなんだな。
 頭の片隅でぼんやり思う。
 彰のことは嫌いではない。
 人としてはむしろ好きな部類だし、信頼してもいる。
 だが、恋愛対象としてはどうだろう。
 それには首を傾げざるを得ない。
 確かに彰とは生まれてこの方、ずっと一緒にいる。
 だがそれは同時に、人生のあれやこれやも知っている仲でもあるのだ。いわば兄弟のようなもので、それがすぐさま恋愛感情につながるのかといえば、それは否だ。
 そもそもこんなに長い間、兄弟のように接してきて、今さらそんな対象になど見られないのが本音だ。
 どう返事をすべきか。それだけのことがひどく恐ろしい。
 憎まれ口ばかり叩いてきたとはいえ、大事な幼馴染だ。下手なことを言えば、自分たちの仲がこじれてしまうかもしれない。この関係を壊したくなかった。
「だめだ。頭ぐっちゃぐちゃ」
 もう何も考えられない。七瀬は考えるのを止めるかのように布団に潜り込んだ。
 起きたらきっといい考えが浮かぶ――そう期待して。


 ちっともいい考えなど思い浮かばない。
 翌朝になっても、七瀬は彰への上手い返事を用意できずにいた。
 どうしよう。
 七瀬の頭をその単語ばかりがぐるぐると回る。
 確かに彰は大事な幼馴染だが、その彼と付き合うことを考えると……どうにも気恥ずかしい。考えるのも恥ずかしくて、急いで頭からその考えを振り払う。
「何してんだ?」
家の門の前で、彰はいないだろうなと確認をしていると、左から今一番聞きたくない男の声がかけられた。
「ぎゃっ」
「お前、もうちょっと色気のある声を出せよ」
「あああ彰……」
「……その様子だと返事は期待できそうにないな」
「だ、だって!」
 七瀬は思わず声を荒げた。
「あたし、今まで彰のこと、家族みたいなものだと思ってたのよ? なのに今更恋愛対象として見ろってどういうこと? それも、「好きかも」なんて曖昧な言葉を使って! はっきりさせようと告白してきただろうに、あんたの方が曖昧のままでいたいみたいじゃない!」
「あー、わかったわかった、俺が悪かった」
 投げやりに謝られると、怒りはさらに増していく。
「何その言い方! 大体あんたは……」
「わかったって! そんなに怒るなよ。こっちだってあの時は頭真っ白だったんだから、そんなにケチつけるなよ」
「……そうなの?」
 七瀬は思わず彰の顔を覗き込んだ。
 あの彰が、緊張。いつも何でもないと言わんばかりの顔で、何でもすいすいとこなしていく彰が。
「好きな女に告白するときくらい、パニックにもなる」
 ほんのりと頬を染めた彰を目にして、七瀬は口を大きくあんぐりと開いたまま立ちつくした。
「……あたし、彰のこと異性としては見られないよ?」
「わかってる。もうずっと幼馴染だったもんな。でも、昨日言ったことは嘘じゃない。お前と恋人になりたい。だから、覚悟しとけよ」
 何のことだろうと首を傾げていると、彰はにやりと笑った。
「今度は絶対に、お前から告白させてやるからな。今に見てろ」
「っ! な、なっ?!」
 真っ赤になった耳を両手で押さえながら、楽しそうな彰の背中を見送る。
 うるさいくらいにどくどくと鳴る胸を押さえた。そうしないと彰にまでこの音が聞こえてしまいそうだった。
 癪なことだが、もしかしたら、自分はいつか彰の言うとおりにするのかもしれない。
 そうしたらその時は、自分も「好きかも」と言ってやろうと心に決め、七瀬は彰の後を追った。

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【2013/05/18 21:19 】 | | 有り難いご意見(0)
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